新型の株式報酬
平成26年6月23日の日本経済新聞において、「新型の株式報酬」が紹介されていました。税務上の取り扱いと併せてご紹介いたします。
金額換算し毎年取締役に報酬として支払
通常のストックオプション制度では、付与する権利数を決めます。従って、付与された側での利益額は行使時点の株価次第で変動します。
しかし、不動産開発のエー・ディー・ワークスでは、権利の数を決めるのではなく、事前に金額を設定し、その金額に見合う株式を交付する制度を導入したようです。
メリットとしては、株価が上昇した場合、交付する株式の金額が一定なので分交付株式数は減り、信託終了時に残った株を取締役に配分する制度としているため、取締役にとっては株価上昇へのインセンティブとなることです。そのほかにも、税務上、有利になるとの記載がありました。それはいったいどういうことなのでしょうか?
役員報酬の税務上の取り扱いと新型株式報酬の関係
役員報酬は、毎月定額でなければ原則税金計算上の費用とはなりません。ただし事前に届出書を提出しておけば、賞与(=毎月定額でないもの)を支払った場合でも費用となりますが、株主総会での役員報酬の決議後1月以内(または事業年度開始から4か月以内)に届出しなければなりません。つまり事前に金額を決定しておかなければならないのです。エー・ディー・ワークスの株式報酬は金額を事前に決めることができるため、所定の期限までに届出書を提出しておき、決められた時期に年1回、取締役に対して株式報酬を支払う方法がとられているようです。
この方式であれば、税務上は問題なく費用として処理することができます。
これに対して、いわゆるストックオプションに係る報酬は、毎月定額で支払われるものではなく、また事前に金額も決められないことから、給与所得とされた場合で役員に対するものであれば、税務上の費用とは認められないことになります(※通常は退職所得となるよう制度設計されるため、退職所得は会社側では費用となります。また、役員側は退職所得の優遇措置が受けられることになります)。