消費税軽減税率の導入
平成27年10月より消費税が10%に引き上げとなる見込みですが、あわせて、食料品に対する軽減税率導入が検討されています。
軽減税率導入により複数の税率が適用され、計算が複雑となるため、ヨーロッパなどで導入されている「インボイス方式」の導入が検討されています。
~インボイス方式とは~
インボイス方式とは、ヨーロッパで導入されている方式で、請求書に消費税額(付加価値税額)を明記することを求めている方式です。
実は、日本では、請求書に消費税額を記載することは求められていません。取引金額は税込が基本となっていたため、平成26年3月以前は「総額表示」方式が原則となっていました(消費税率8%導入により、税抜価格表示が認められるようになりました)。
税抜金額+消費税と記載されていればその合計額が税込金額となり、消費税額が記載されていない場合は、取引総額が税込金額となります。この税込金額をベースに、事業者が納税すべき消費税を計算します。
~インボイス方式導入により、免税事業者は消費税を請求できなくなる~
インボイス方式が導入されると、消費税の免税事業者(2年前の売上が1000万円以下など小規模の事業者)が影響を受けることになります。
免税事業者は本来、消費税の納税義務がないことから、消費税を預かることはできないはずなのですが、日本の制度上は、免税事業者であるか、課税事業者であるか、相手方に通知する必要はないことから、課税事業者と同様に、本体価格+消費税で請求しているケースが多いと思います。
ところが、ヨーロッパと同様のインボイス方式が導入されると、免税事業者の場合は消費税額の記載をすることができなくなります(消費税額を記載する場合は、課税事業者であることの証明として事業者番号を記載する必要があります)。
これまで免税事業者が税抜100円+消費税額8円=108円を請求していたとして、仮にインボイス方式が導入されると、税抜100円の請求が原則になると思われます。というのも、支払い側からすると、免税事業者への支払いは、「仕入税額控除」が適用されないため、税抜100円に対して消費税8円を上乗せすることは許容できないからです。
~免税事業者の益税問題~
免税事業者の消費税相当額の請求はいわゆる「益税」問題として従来から問題となってきましたが、ヨーロッパと同等のインボイス方式が導入されると、一応「益税」問題は解消します。その分、中小・零細企業の負担が増加することは確実です。
~課税事業者の選択が増える?~
ヨーロッパ並みのインボイス方式が導入されると、免税事業者は取引上不利となるため、あえて「課税事業者」を選択して、消費税を納税するケースが増えることが予想されます。
課税事業者の選択は、事業年度(個人の場合は1/1から12/31)開始前に届出書を税務署に提出する必要がありますのでご注意ください。