エンジェル税制の改正動向
エンジェル税制をご存じでしょうか?
エンジェル税制・・・・ 実は、あまり使い勝手がよくないこともあり、たとえば投資対象となる企業は平成22年度の年間でわずか18社(経済産業省資料による)の事例しかなく、我々税理士も直接取り扱う機会がほとんどないことから、正直あまり内容を詳しく把握しているわけではありません。世間一般でもほとんど知られていないのが実情かと思います。
しかしこのエンジェル税制も、改正が行われる見込みです。せっかくなので、簡単に、現状のエンジェル税制とはどのような税制なのか、ご説明したいと思います。
~投資時の優遇~
<優遇措置A>
1,000万円(または総所得金額×40%)を限度に投資額(実際投資額から2,000円を控除)について総所得金額から控除できます。1,000万円限度とされていますが、これは総所得金額2,500万以上の方の限度額となりますので、例えば総所得金額1,000万円の場合は、400万まで優遇額は下がります。
<優遇措置B>
株式譲渡益に限定されますが、投資額全額を株式譲渡益と相殺することができます。
~譲渡時の優遇~
譲渡時に損失が生じた場合は、その年及び翌年以降3年間にわたり、譲渡損を譲渡益と相殺することができます。なお、投資時の優遇を受けた場合は、その分、相殺できる金額が減ります。
~投資対象企業~
投資する対象はどの企業でもよいわけではありません。
まず優遇措置Aの場合は、設立3年未満の中小企業(※業種に応じて規模要件が定められています)、外部からの投資を1/6以上取り入れている、大規模法人の子会社等でないこと、の要件を満たし、かつ、設立からの経過年数に応じて色々な条件が定められています。
・1年未満かつ設立第1期中の場合
研究者あるいは新事業活動従事者が2人以上かつ常勤役員・従業員の10%以上
・1年未満かつ設立第2期の場合
研究者等が2人以上かつ常勤役員・従業員の10%以上で第1期キャッシュフローが赤字
・1年以上2年未満
試験研究費等が収入金額の3%超で直前期までのキャッシュフローが赤字。または新事業活動従事者2人以上かつ常勤役員・従業員の10%以上でかつ直前期までのキャッシュフローが赤字
・2年以上3年未満
試験研究費等が収入金額の3%超で直前期までのキャッシュフローが赤字。または売上高成長率が25%超で営業キャッシュフローが赤字
※優遇措置Bの場合、ここでは記載は割愛しますが、年数に応じて同じような条件が設けられています。
~投資家の要件~
投資家についても要件があり、①金銭の払い込みにより株式を取得していること、②ベンチャー企業が同族会社の場合は、50%超を保有する株主グループに属していないこと、が要件となっています。つまり、親族のみが株式を保有するいわゆる同族会社が対象になるのは難しいということです。
~今後の改正の方向~
上記の通り、条件がいろいろ付されているので、なかなか使い勝手がいいとはいえない制度ですが、政府は、ベンチャー企業支援のため、税制優遇の拡大を検討しています(日本経済新聞、平成26年5月3日)。
・投資対象額を1千万円から数千万円に拡大
・会社員の副業規制について起業のための副業を認める指針を策定
設立後3年未満に限定されている優遇措置Aの要件について、5年未満の企業へ拡大することも検討されているようです。その他の要件について、どこまで緩和されるものか、引き続きウォッチを続けて参ります。