粉飾決算とは(その1)
粉飾決算とは?
最近ゲーム・コンテンツ制作会社である「インデックス」の粉飾決算が新聞報道されていました。会長・社長が逮捕されるなど、大きな事件となっています。
上場会社である同社は、粉飾決算により架空売上を計上し、赤字を黒字とすることで、債務超過をなんとか回避しようとしていたようです(ちなみに、債務超過が1年以内に解消できないと上場廃止となってしまいます)。過去にも似たような事例として、オリンパスやカネボウなど巨額の粉飾決算事件が報じられてきました。
粉飾決算とは、簡単にいえば本来赤字である会社が黒字であると見せかけるために、例えば売上を過大に計上したり、または在庫を過大に計上して費用である売上原価を過少に計上することをいいます。おおよその手口はそのようなところですが、さらに悪質になると、架空の預金を創設してあたかも実際に売上代金が入金されたものとして処理を行うケースもあります。
粉飾決算の典型的なパターン (在庫の過大計上)
実際の簡単な仕組みをご紹介しましょう。例えば、商品販売業で考えてみます。
一番簡単な粉飾の方法は、期末の在庫を過大に計上するものです。
・本来の在庫は100
・架空でさらに在庫を100計上(合計200)
仕訳で示せば、
商品 200 / 期末棚卸高 200
となります。
この仕訳を一本付け加えるだけで、なんと、当期の利益は100UPします。
<前提>
正常な在庫水準は毎期 100 とする
当期の仕入は 1000 とする
<正常な売上原価>
期首在庫100+当期仕入1000-期末在庫100=1000 → 売上原価
<在庫100を過大計上した場合の粉飾後売上原価>
期首在庫100+当期仕入1000-期末在庫200=900 → 売上原価
在庫100の過大計上により、売上原価が1000→900へ減少し、その分利益が100増えることになります。
翌期の影響に注意!
しかし気を付けなければならないのは、期末の在庫は、翌期の費用として再度認識する必要がある点です。過大計上した在庫は翌期の費用となりますので、翌期の利益を圧迫することになります。
<翌期の売上原価(粉飾をしない場合>
期首在庫200+当期仕入1000-期末在庫100(本来の数字)=1100 → 本来の水準1000に比べ100利益が減少します
翌期の利益が回復していれば、原価の上昇も吸収できますが、仮に利益が前年並みとなれば、また赤字になってしまいます。これを回避するため、やはり同じように在庫の過大計上を繰り返してしまうのが、粉飾決算の特徴です。
<翌期の売上原価(在庫を再度過大計上して粉飾)>
期首在庫200+当期仕入1000-期末在庫200=1000 → 在庫の過大計上を再度行うことで利益が確保されます。
つまり、一度粉飾に手を染めると、よほどの急激な業績回復がない限り、同じように粉飾を続けるしかないことになります。粉飾の穴から抜け出すのは、実は非常に困難なのです(何やら、少し前に世間を騒がせていた〇〇と感じが似ています。。。)
まとめ
ですが、世間一般、特に中小企業においては粉飾決算が多いのも事実です、銀行融資が命綱の中小企業にとって、なんとか決算書を黒字にしなければならないというプレッシャーがあります。いったん赤字となれば、新規融資が非常に厳しくなり、資金繰りがつかなくなってしまいます。
しかしご留意いただきたいのは、一度粉飾決算を始めてしまうと、よほどの業績回復が期待できない限り、なかなか粉飾決算からの脱却は難しいという点です。当然ながら、粉飾決算は本来詐欺行為であり、犯罪に該当しますので、先行きを考えれば、いいことは全くありません。
大事なのは過去の赤字の事実ではなく、将来に向けた改善努力と少しの勇気だと考えます。粉飾決算からの脱却を目指す経営者の皆様からのご相談を積極的に受付しております。
なお、最後に、当然ですが、我々税理士が粉飾決算にかかわることはできませんのでご了承ください。